
電気代が高くなったと感じることはありませんか?
その原因のひとつが、古い家電かもしれません。特に10年以上前の家電は、最新の省エネ家電と比べて消費電力が大きく、知らないうちに電気代がかさんでいる可能性があります。
一方、最近の家電は性能が向上しながらも、省エネ設計で家計にやさしいのが特徴です。
この記事では、家電の電気代の仕組みから省エネ家電の選び方、そして10年前の家電との比較まで、電気代節約のポイントをわかりやすく解説します。
家電の電気代はどう決まる?
電気代を少しでも抑えたい。そう思ったときにまず知っておきたいのが「家電がどれだけ電気を使っているか」。
消費電力量や電気代の計算方法がわかれば、ムダを見つけて上手に節約するヒントが見えてきます。
消費電力量とは
「消費電力量」とは
家庭内で使用される電気機器が一定期間内に消費する電力量のことを指します。これはワット(W)やキロワット時(kWh)といった単位で表され、家電のエネルギー効率を知るうえで重要な指標です。
「年間消費電力量」とは
家電をJIS規格で定められた条件下で1年間使用した場合の電力量を示す数値です。
定格消費電力が最大使用時の電力を表すのに対し、年間消費電力量は実際の使用に近い条件で算出されます。スタンバイ状態でも電力を使う家電や、使用状況で消費量が変わる製品もあるため、目安として役立つ指標となっています。
消費電力量を正確に把握するには、各家電の測定方法や表示の見方を知ることが大切です。多くの家電には、年間消費電力量が記載されたラベルや取扱説明書が付属しており、家庭のエネルギー使用状況を把握する際に役立ちます。
さらに、電力計を使えば実際の使用に基づいた詳細な測定も可能です。
電気代の出し方
消費電力量をもとに電気代を算出することで、節約効果を把握しやすくなります。
電気代の基本的な計算式は
「1時間あたりの消費電力(kW)×使用時間(時間)×料金単価(円/kWh)」です。
計算例:「消費電力500W」の家電を「1時間使用」した場合
- 定格消費電力(W)× 使用時間(h)= 消費電力量(Wh)
→ 500W × 1h = 500Wh - 消費電力量を W → kW へ変換
→ 1000W = 1kW → 500Wh = 0.5kWh - 消費電力量 × 電力量料金単価 = 電気代の目安
→ 0.5kWh × 31円/kWh = 15.5円
※全国家庭電気製品公正取引協議会「電力料金目安単価」から1kWhあたり31円(税込)として計算
年間消費電力の計算方法
電気代の算出方法を理解すれば、毎月の支出をより正確に把握し、節約対策に役立てることができます。
年間電気代の目安は「年間消費電力量(kWh) × 電力量単価(円/kWh)=年間電気代の目安」で求められます。
以下に、主要家電の年間消費電力量と電気代の目安を示します。
家電名 | 年間消費電力量 | 年間電気代目安 |
エアコン | 800kWh | 24,800円 |
冷蔵庫 | 400kWh | 12,400円 |
照明機器 | 200kWh | 6,200円 |
表1:主要家電の電気代算出例
出典:省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」を使って筆者試算
※全国家庭電気製品公正取引協議会「電力料金目安単価」から1kWhあたり31円(税込)として計算
このように、家電ごとの消費電力量を把握することで、どの製品が電気代に大きく影響しているかがわかります。
省エネ家電の特徴とメリット
省エネ家電とは?
省エネ家電とは、従来の家電製品に比べてエネルギー効率が大幅に向上した、環境にも家計にもやさしい最新技術搭載の家電を指します。
高性能な省エネ設計により、少ない電力で効率的に稼働し、快適な生活環境を実現できます。
年間の電力量と節約効果
最新の省エネ家電は、10年前のモデルと比較して年間の消費電力量を大幅に削減しています。
これにより、電気代を抑えながら環境負荷も軽減することができます。
家電製品 | 10年前の 年間消費電力量(kWh) | 最新省エネ家電の 年間消費電力量(kWh) | 削減率 |
冷蔵庫 | 400 | 260 | 35% |
エアコン | 800 | 650 | 19% |
テレビ | 144 | 83 | 42% |
※2014年と2024年の電化製品で比較(テレビのみ2010年と2020年比較)
(冷蔵庫:401~450L、エアコン:7~10畳タイプ、テレビ:40V型液晶テレビ)
表2:家電製品の消費電力量比較
出典:省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」を使って筆者試算
これらの削減効果により、年間で数千円〜数万円単位の電気代節約も期待できます。
エアコンやテレビなど、使用頻度の高い家電であればあるほど効果は大きくなります。
省エネ家電の導入は、電力消費の削減だけでなく、CO₂排出の抑制にもつながり、地球温暖化対策にも貢献します。
家計と環境の両面からメリットが得られる、省エネ家電への買い替えは今後ますます重要になっていくでしょう。
10年前の家電と最新省エネ家電の比較
ここでは、10年前の家電と最新の省エネ家電における消費電力量と電気代の違いについて見ていきましょう。
エアコン
エアコンの消費電力量は、過去10年間で大きく変化しています。10年前のモデルは最新の省エネタイプに比べて電力消費が高く、その分、年間の電気代にも大きな差が生まれます。

図1:エアコン省エネ性能比較
出典:一般財団法人 家電製品協会「2024スマートライフおすすめBOOK」資料を参考に作成
※冷暖房兼用・壁掛け形・冷房能力2.8kWクラス
年間電気代は、期間消費電力量に電力料金目安単価31円/kWh(税込)を乗じて算出
最新省エネエアコンの特徴
インバーター運転:開始時はフル稼働、室温安定後は最小出力で効率運転
再熱除湿機能:室温を下げずに除湿。排熱を再利用し、省エネ性も高い
ヒートポンプ方式:外気の熱を利用して暖房、エネルギー効率が高い
フィルター自動清掃:フィルターの汚れを自動で除去し、効率低下を防止
空気清浄機能:花粉や煙、浮遊菌などを除去し、室内空気を清潔に
学習・AI機能:センサーやAIで人の状態を把握し、快適な運転を自動制御
スマホ連携操作:外出先からスマホで操作・状態確認ができて便利
出典:一般社団法人 日本冷凍空調工業会「最新のエアコンならこんなことができます」より作成
このように、最新の省エネ家電を選ぶことで、電気代の大幅な節約だけでなく、環境負荷の軽減にもつながります。エアコン選びの際は、消費電力量や搭載されている省エネ技術に注目し、長期的なコストパフォーマンスも意識することが大切です。
冷蔵庫
過去10年間で、冷蔵庫の消費電力量は大幅に改善されました。新しい技術の導入により、従来のモデルと比較してエネルギー効率が飛躍的に向上しています。これにより、家庭の年間電気代の削減にもつながっています。

図2:冷蔵庫省エネ性能比較
出典:一般財団法人 家電製品協会「2024スマートライフおすすめBOOK」資料を参考に作成
※年間電気代と年間消費電力量は「しんきゅうさん」のデータを使用
年間電気代は、期間消費電力量に電力料金目安単価31円/kWh(税込)を乗じて算出
最新省エネ冷蔵庫の特徴
インバーター制御:庫内温度や開閉状況に応じてコンプレッサーを効率運転
自動節電運転:長時間開閉がない時など、自動で省エネモードに切替
高性能断熱材:真空断熱材で熱の侵入を抑え、冷却効率アップ
出典:一般財団法人 家電製品協会 省エネ家電deスマートライフ 冷蔵庫の進化した省エネ技術と技術トレンド を参考に作成
冷蔵庫を選ぶ際の省エネポイントとしては、エネルギー効率ラベルの確認や適切なサイズの選択が重要です。また、設置場所を工夫したり、定期的にメンテナンスを行ったりすることで、消費電力の削減につながります。
さらに、最新の省エネ機能を搭載したモデルを選ぶことで、長期的な電気代の節約と環境への配慮を両立させることが可能です。
照明機器
従来の照明機器、例えば白熱電球や蛍光灯は、消費電力が高く、電気代もかさみやすいのが課題でした。
一方、最新のLED照明は、省エネ性能に優れ、電気代を大幅に節約できます。
それでは、省エネ性能の比較を見ていきましょう。

図3:照明機器の省エネ性能比較
出典:一般財団法人 家電製品協会「2024スマートライフおすすめBOOK」資料を参考に作成
※年間点灯時間:2000時間(1日5~6時間点灯した場合)
年間消費電力量に電力料金目安単価31円/kWh(税込)を乗じて算出
電力料金目安単価:公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会(2022年7月22日改定)
消費電力:8畳用蛍光灯用シーリングライト 68W、LEDシーリングライト 34W、白熱電球 54W、電球形LEDランプ 7.5W
最新省エネ照明機器の特徴
調光・調色機能:1台で明るさと色味を自在に調整
自動調光機能:室内の明るさに応じて自動で光量を調整
センサー節電:人感・明暗センサーで消し忘れを防止
音声操作対応:スマートスピーカーで照明を音声操作
スマホ操作対応:アプリで明るさや色を自由にコントロール
出典:一般財団法人 家電製品協会 省エネ家電deスマートライフ 照明器具の進化した省エネ技術と技術トレンド を参考に作成
LED照明は寿命が長く、約25,000時間以上使用可能なため、交換の手間とコストが削減できます。
また、環境に配慮した素材が使われており、CO₂排出削減にも貢献します。
寝室の間接照明や廊下の常夜灯など、常に点灯している場所にLED照明を導入することで、家庭全体の電気代を効果的に抑えることが可能です。
省エネと快適性を両立させる照明選びが、これからの持続可能な暮らしに繋がります。
省エネ家電の選び方
省エネ家電を選ぶ際は、省エネルギーラベルや統一省エネラベルをチェックするのがポイントです。
これらのラベルには、省エネ性能や年間電気代の目安が記載されており、製品の比較・選定に役立ちます。
ここでは、メーカーが表示する「省エネルギーラベル」と、小売店が表示する「統一省エネラベル」について解説します。
省エネルギーラベルとは?

図4:省エネルギーラベル
出典:経済産業省資源エネルギー庁|統一省エネラベルが変わりました の資料を参考に作成
「省エネルギーラベル」は、主にメーカーが表示するラベルで、家電の省エネ性能をわかりやすく示しています。以下の3点がポイントです。
①省エネ性マーク:省エネ基準の達成度を色で表示。緑色は100%達成、オレンジ色は未達成。
②省エネ基準達成率:製品がどの程度、省エネ基準を上回っているかを数値で表示。数値が大きいほど高性能です。
③エネルギー消費効率:使用エネルギーの効率を表す数値。エアコンならAPF(通年エネルギー消費効率)などがあり、効率が高いほど省エネです。
④目標年度:トップランナー基準を達成すべき年度で、製品ごとに設定されています。
このようなラベルを活用することで、性能の違いを見極めやすくなり、電気代の節約や環境負荷の軽減にもつながります。
統一省エネラベルとは?

図5:統一省エネラベル解説
出典:経済産業省資源エネルギー庁|統一省エネラベルが変わりました を参考に作成
「統一省エネラベル」は、家電の省エネ性能を星の数でわかりやすく表示する仕組みで、主に小売店が表示しています。
従来の表示よりも直感的で、製品選びの比較がしやすいのが特長です。
~新しいラベルのポイントを紹介~
①多段階評価点:省エネ性能を5.0~1.0まで41段階で評価。星の数でわかりやすく表示。
②省エネルギーラベル:達成率が高い製品は緑色のマーク。エネルギー消費効率や達成率もあわせて記載。
③メーカー名・機種名:製品の情報が記載され、信頼性と識別性をサポート。
④年間目安エネルギー料金:一定条件での年間電気代を表示。照明は1日5.5時間、テレビは5.1時間使用を想定。

図6:統一省エネラベル「多段階評価の基準」の変更
引用:経済産業省資源エネルギー庁|統一省エネラベルが変わりました
多段階評価の基準が変わりました。
これまでは製品の省エネ基準達成率に応じて5段階の★の数を決めていました。
新しい統一省エネラベルでは、機器や区分が異なる場合でも比較できるよう、製品の省エネ性能そのもの(kWh/年・lm/Wなど)を評価基準に変更し、多段階評価点(★の数)を算出。多段階評価点の高い順に5.0~1.0までの41段階の数字と★の数で表示します。

統一省エネラベルは、2020年11月、2021年8月、2022年9月にデザインや評価方法が改正されました。これにより、より視覚的にわかりやすく、評価基準が一貫した形で表示されるようになっています。
統一ラベルは、異なるメーカー間でも一貫性のある比較ができるため、消費者にとってわかりやすく、選びやすい設計となっています。
冷蔵庫やエアコン、テレビなど、多くの製品に導入されており、賢く省エネ家電を選ぶための大切な指標です。
買い替え時のヒント
省エネ家電に買い替える際のポイントは、まずエネルギー効率を確認することです。統一省エネラベルや省エネラベルを参考にし、消費電力の少ない製品を選びましょう。
また、古い家電を長期間使用していると、性能が劣化し、無駄な電力を消費していることもあります。
特に冷蔵庫やエアコンなどは、最新の省エネ技術が導入されており、買い替えることで電気代の削減や環境負荷の軽減に繋がります。さらに、購入後の設置場所や使用方法も省エネに影響するため、適切な場所に設置し、定期的なメンテナンスを行うことも大切です。
電力会社・料金プランの見直しでさらに節約!
省エネ家電の導入に加えて、電力会社や料金プランの見直しも節約に効果的です。
多くの電力会社では、時間帯別や使用量に応じた料金プランが提供されています。
例えば、夜間や週末の電力料金が安くなるプランを選ぶことで、電気代を大幅に削減できる場合があります。
また、自分の生活スタイルに最適なプランを選ぶことで、無駄な費用を削減でき、より効率的にエネルギーを使用することができます。
定期的に料金プランを見直し、ライフスタイルに合った最適な選択をすることが、長期的な節約につながります。


執筆者
小売電気アドバイザー
大山 泰正
小売電気アドバイザーの資格を持ち、電気の比較・情報サイト「エネべる」を運営しています。運営会社である株式会社enebellの代表取締役として、電力業界の最新情報や節約術に関する豊富な知識を提供。電力自由化や最適な電力プラン選びに関するアドバイスを分かりやすく解説しています。