売電とは?太陽光発電で収入を得る仕組みを簡単解説

売電とは?

設置した太陽光発電用ソーラーパネルで発電した電気を「売ることができる」と聞いたことはありませんか?

本記事では、「売電」という言葉は知っているけど、

「どう始めたらいいの?」「本当に利益が出るの?」など疑問や不安を感じている方に向けて、売電の仕組みから始め方、必要な設備やお金のことまで一からわかりやすく説明していきます!

また、近年話題となっている「卒FIT」など、売電の今後についても理解を深め、売電をうまく活用していきましょう!

売電とは何か?

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売電の基本的な仕組み

売電とは、太陽光発電でつくった電気のうち、家庭で使いきれずに余った分を電力会社に買い取ってもらう仕組みです。特に一般家庭では、「余剰電力買取方式」が主に利用されています。

この方式では、日中に太陽光パネルが発電した電気をまず家庭で使い、それでも余った分は自動的に電力会社に送られて買い取られます。

そのため、電気代を節約しながら、さらに売電収入も得られるのが魅力です。

図1:売電の収益モデル

ちなみに、発電した電力をすべて売る「全量買取方式」という制度も存在しますが、こちらは主に事業用や大規模な設備向けで、現在の一般家庭では基本的に採用されていません。

売電制度の歴史とFITについて

売電制度は、再生可能エネルギーの普及促進を目的として、2009年に導入されました。この制度により、個人や企業が太陽光発電システムを設置し、発電した電力を電力会社に売却することが可能となりました。

その後、大きな転機となったのが2012年にスタートした「固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)」です。

この制度は、太陽光や風力などで発電された再生可能エネルギーを、国が定めた固定価格で一定期間、電力会社が買い取ることを義務付けた制度です。これにより、個人でも太陽光パネルを設置して電力を「売る」という行為が一般的になりました。

導入当初は、10kW未満の住宅用太陽光発電では、1kWhあたり40円前後で売電できる時期もありました。これが「太陽光バブル」とも呼ばれる時期で、多くの家庭や事業者が太陽光発電に参入しました。
しかし、再エネ導入の進展とともにコストが下がり、FITの買取価格も年々引き下げられています。

さらに、制度開始から10年が経過したことで、2022年頃から「卒FIT」(=買取期間の満了)を迎える家庭が増加。これをきっかけに、「FIT後の売電先をどうするか」「蓄電池の導入は必要か」といった新たな課題も生まれています。

現在は、FITに代わる新たな制度「FIP(フィードイン・プレミアム)」の導入も進んでおり、売電制度はまさに過渡期を迎えています。

売電して利益を出すには?

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うちは売電できるの?

「うちも売電できるのかな?」と気になっている方は多いかもしれません。
売電ができるかどうかは、いくつかの条件をクリアしているかどうかによって決まります。

太陽光発電システムが設置されていること

まず大前提として、屋根や敷地に太陽光パネルを設置していることが必要です。設置していない場合は、初期費用をかけて導入する必要があります。

系統連系(けいとうれんけい)が済んでいること

太陽光発電でつくった電気を電力会社に送るには、家庭の電気配線と電力会社の送電網をつなぐ「系統連系」という工事が必要です。これも設置業者が対応しますが、申請~工事完了までに数週間かかる場合もあります。

こちらも確認方法として、「設置業者に確認する」「電力会社に問い合わせる」ほかに「系統連系通知書を確認する」方法があります。

系統連系が完了している場合、電力会社から「系統連系完了通知書」や「連携承諾書」が郵送または電子メールで届いている場合があります。これが届いていれば連系は完了しています。

電力会社との売電契約を結んでいること

発電した電気を買い取ってもらうには、電力会社との「余剰電力買取契約」が必要です。太陽光パネルの設置時に業者が申請手続きを代行するのが一般的ですが、契約が完了していないと売電はできません。

契約が完了しているか確認するには「設置業者に確認する」「電力会社に問い合わせる」という方法のほかに「売電メーターや検針票を確認する」方法があります。

売電が始まっていれば、電気の検針票やスマートメーターの売電量欄に数値が記載されます。売電量が0の場合は、契約が未完了か売電が開始されていない可能性があります。

売電の条件まとめ

  • 太陽光発電システムが設置されていること
  • 系統連系(けいとうれんけい)が済んでいること
  • 電力会社との売電契約を結んでいること

電力会社ごとので買取料金の差や、単価の途中変動はないの?

売電価格(買取単価)は、基本的に「FIT(固定価格買取制度)」の適用期間中かどうかによって大きく異なります。

まず、FIT制度が適用されている間は、契約時に決定された単価がそのまま適用され続けます。これは、制度の大きな特徴であり、10年間(家庭用太陽光・10kW未満の場合)はずっと同じ価格で電気を買い取ってもらえるという安心感につながります。たとえば、1kWhあたり26円で契約した場合、その単価は契約期間中ずっと変わりません。

ただし、毎年FITの新規契約に適用される単価は見直されており、年々下がる傾向にあります。これは太陽光発電設備のコスト低下などを反映しているためです。つまり、同じように太陽光パネルを設置しても、契約年度によって得られる売電収入が異なることになります。

売電価格

図2:売電価格の推移

そして、FITの適用期間が終了したあとは、固定価格での買取は終了し、売電単価は電力会社との個別契約によって決まることになります。これがいわゆる「卒FIT」です。この段階では、FIP(フィードイン・プレミアム)制度の活用や、民間の新電力会社による市場連動型の買取契約など、選択肢が分かれるため、契約先の見直しや売電戦略の再検討が重要になります。

FIT適用中卒FIT後
売電単価契約時の単価で10年間固定電力会社が調整 or 市場価格に連動して日々変動
契約期間10年間企業ごとに異なる
収益の安定性安定する変動する

売電を始めるのに必要な設備

太陽光発電で売電を行うには、発電から電力会社への送電までを担う一連の設備が必要です。これらの機器は、通常太陽光パネル設置時に業者が一括で導入・設置を行うため、個別に準備する必要はほとんどありません。

主に必要となるのは以下の設備です。

  • 太陽光パネル(ソーラーパネル)
  • パワーコンディショナ(直流を交流に変換)
  • 接続箱(発電した電気をまとめる)
  • 売電用電力量計(売った電気を計測)
  • 系統連系のための電力ケーブルやブレーカー

これらに加えて、発電状況を確認するためのモニターが設置されるケースも多く、日々の発電量や売電量を家庭で簡単に確認することができます。

蓄電池は必要?

売電に必須ではありませんが、近年注目されているのが蓄電池の導入です。蓄電池があれば、昼間に発電して余った電力を夜間に使用できるようになり、自家消費の比率が上がって電気代の削減効果が高まります

また、災害などの停電時にもバックアップ電源として使えるため、防災目的で設置を検討する家庭も増えています。

さらに、FIT期間終了後(卒FIT)には売電価格が大きく下がるため、発電した電気を「売る」より「使う」方向にシフトする動きも広がっており、今後の電力活用を見据えるなら蓄電池の導入は大きな選択肢の一つです。

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売電で得られる収益と費用の仕組み

売電金額の計算方法

売電でどれくらいの収入が得られるかは、次のシンプルな計算式で求められます。

売電金額 = 売電量(kWh) × 買取単価(円/kWh)

たとえば、1ヶ月に200kWhの余剰電力を売電し、買取単価が16円/kWhの場合、
200(kWh)× 16(円)= 3,200円が1ヶ月の売電収入になります。

なお、売電量は使用する電気の量を生活の中で調整することで、減らすことで増やすことも可能です。
ただし、50%を売電に回すといった指定した分だけ売るといったことは難しいです。

どのくらいの収益になるの?

では、この計算方法をもとに実際どのくらいの収益になるのか計算してみましょう。

2021年度の環境省のデータによると、1kWの設置容量の発電量は年間の全国平均で1,303kWhで、そのうち54%が売電、46%が自家消費とされています。

また、一般家庭での太陽光パネルの設置容量は3kW~5kWが一般的です

こちらを踏まえると

3kW(設置容量) × 1,303kWh(年間発電量) × 54%(売電率) × 16円(買取単価) ≒ 33,774円

これが、1年間で売電によって得られる収益です。

また、自家消費による電気代の節約も加味すると年間で「約87,718円」もお得になります。

※電気料金請求時の単価を30円として計算

環境省|令和3年度 再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査委託業務報告書

経済産業省|太陽光発電について

設備について知っておこう!

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初期費用と維持費は?

太陽光発電を導入する際にかかる初期費用は、住宅の新築・既築によっても費用には差があるため、それぞれのケースで見ていきましょう。

初期費用の目安

太陽光発電の導入費用は、設置容量1kWあたりで以下が目安です。

  • 新築住宅の場合:28.6万円/kW
  • 既築住宅の場合:32.6万円/kW
設置条件1kW費用3kW費用5kW費用
新築住宅約28.6万円約85.8万円約143万円
既築住宅約32.6万円約97.8万円約163万円

新築のほうが施工時に太陽光の設計を組み込みやすいため、費用が割安になる傾向があります。一方、既築住宅では配線工事や構造対応の追加作業が発生することがあり、やや高くなります。

維持費の目安

太陽光発電は基本的に自動運転でメンテナンスの手間は少ないですが、長期使用を前提とした定期点検や一部機器の交換などが必要になります。

  • 定期点検(4年に1回): 約2~5万円
  • パワーコンディショナ交換(20年に1回): 約15〜25万円

こうした維持費を見越して、導入後も安心して使えるように準備しておくと安心です。

発電効率を上げるには?

せっかく太陽光発電を導入するなら、1kWhでも多く発電して効率よく売電したいもの。発電効率を高めるためには、設置後のちょっとした工夫や日常のメンテナンスがカギとなります。以下のようなポイントを押さえておきましょう。

パネルの向きは南向き、角度は30度前後に!

設置時に最も重要なのが、太陽の光を無駄なく受けられる向きと角度にパネルを配置することです。日本では多くの場合、「南向き」「傾斜角30度前後」が理想とされます。東西向きでも一定の発電量は確保できますが、効率は若干落ちる可能性があります。

定期的な清掃で発電ロスを防ぐ

パネル表面に汚れやホコリ、落ち葉などが積もると、光の透過率が下がって発電量が低下します。特に2月から5月の春先の花粉や砂ぼこりの多い地域では影響が出やすいため、年に1〜2回程度の清掃をおすすめします。

高所作業になるため、プロに依頼するのが安心です。
業者にもよりますが基本料金3~5万円 + 500~1000円(パネル1枚あたり)が一般的な料金形態とされているので、この金額を目安に見積りを取ってみると良いでしょう。

周囲の影の影響をチェック

近くの木や建物の影がかかると、思った以上に発電効率が落ちることがあります。設置時だけでなく、数年後に樹木が成長して影になることもあるため、定期的に周囲環境し必要に応じて木の剪定を行うなど、パネルがなるべく影にならないよう気をつけましょう。

パワーコンディショナの性能も重要

太陽光で発電した電気を家庭用の電力に変換する「パワーコンディショナ(パワコン)」の性能も、発電効率に影響します。古くなった機種は変換ロスが大きくなるため、10〜15年を目安に交換や見直しを検討しましょう。

発電効率を上げるためには?

  • パネルの向きは南向き、角度は30度前後で設置する
  • パネルの定期的な清掃で発電ロスを防ぐ
  • 木などの周囲の影の影響をチェック
  • 10~15年以上交換していないパーワーコンディショナは交換

売電の今後

電力自由化デメリット

卒FIT以降は売電できなくなるの?

結論から言うと、卒FIT(固定価格買取制度の期間満了)を迎えても、売電自体ができなくなるわけではありませんただし、FIT期間中のような「国が保証した固定価格での売電」は終了するため買取先や買取価格の条件が大きく変わる点には注意が必要です。

FIT制度では、契約時に決まった単価で10年間(住宅用の場合)電力会社が電気を買い取ることが義務付けられています。しかし、その期間が終了すると、電力会社が必ず買い取る義務はなくなり、売電価格も市場価格や事業者の方針によって変動します。

卒FIT後の選択肢

卒FITを迎えたあとも、売電という仕組みは継続するため、発電した電力の活用方法を検討する必要があります。

新たな買取プランで引き続き売電する

大手電力会社や新電力会社が提供する「卒FIT向け買取サービス」を利用することで、引き続き余った電気を売電することができます。
ただし、FIT期間中のような高単価は期待できず、買取価格はおおむね1kWhあたり8〜10円程度が相場です。電力会社によってはポイント還元など独自の特典が付く場合もありますので、複数社を比較検討するのがおすすめです。

蓄電池を導入して自家消費を拡大する

発電した電気を蓄電池に貯めて夜間に使用することで、電力会社から買う電気を減らし、電気代を抑えることができます。

特に、電力単価が高くなっている昨今では、自家消費率を上げることで売電よりも経済的なメリットが出るケースもあります。また、災害時の非常用電源としても活用できるため、防災対策としても注目されています。

P2P電力取引やFIP制度への移行

少し発展的な選択肢として、発電した電気を個人間で取引できる「P2P電力取引(ピア・ツー・ピア)」や、市場価格にプレミアムを上乗せして買い取る「FIP制度」に対応するという手もあります。これらはやや専門的な知識や対応設備が必要になるため、事業用向けの選択肢ではありますが、今後の一般家庭向けサービスの普及にも注目が集まっています。

卒FIT後の選択肢

  • 買取単価は下がるが、新しい買取プランで売電を継続する
  • 蓄電池を導入して売電ではなく自家消費により、電気代を節約する
  • 今後の動き次第だが、P2P電力取引やFIP制度への移行の動向の様子を見る

まとめ|売電と自家消費で家計全体で見た節約

太陽光発電による売電は、発電した電気を電力会社に売ることで直接的な収入を得られるメリットがあります。一方で、昼間の電気を自宅で使い、自家消費を増やすことも電気代の節約につながります。

特に近年は電気代の高騰が進んでおり、売電よりも自家消費の方が家計にプラスになるケースも増えています。また、卒FIT後も蓄電池や新たな契約先の選定によって、発電した電力を賢く活用する選択肢が広がっています。

売電制度は今まさに過渡期にありますが、正しい知識を持つことで、電気代の削減と収入の両立が可能になります。制度の変化に対応しつつ、ライフスタイルに合った発電・売電の運用方法を選びましょう。

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執筆者

小売電気アドバイザー

大山 泰正

小売電気アドバイザーの資格を持ち、電気の比較・情報サイト「エネべる」を運営しています。運営会社である株式会社enebellの代表取締役として、電力業界の最新情報や節約術に関する豊富な知識を提供。電力自由化や最適な電力プラン選びに関するアドバイスを分かりやすく解説しています。