電力自由化とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説!

電力自由化とは?

「電力自由化って聞いたことあるけど、結局何が変わったの?」「どの電力会社を選べばいいのかわからない……」

そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、電力自由化の基本的な仕組みから、私たち消費者にとってのメリット・デメリットまでを、わかりやすく解説していきます。これから電力会社の乗り換えを検討している方や、今さら聞けない基礎知識を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

電力自由化とは?

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電力自由化って何?簡単にいうと「電気の選択が自由になった」

電力自由化を一言でいうと、「どの電力会社と契約するかを自分で選べるようになった」ということです。

かつては、住んでいる地域によって契約できる電力会社が決まっており、選択肢はほとんどありませんでした。

しかし、2016年4月から電力自由化により、一般家庭でも自由に電力会社を選べるようになりました。

これにより、新しい電力会社(=新電力)が次々に登場し、料金やサービスの競争が始まりました。今では携帯電話やインターネットのように、電気もさまざまな会社から選べる時代になったのです。

たとえば、ガス会社や通信会社、コンビニチェーンなど、異業種の企業も電力事業に参入し、セット割やポイント還元など、独自のサービスを提供しています。

これにより、料金を安くしたり、自分のライフスタイルに合ったプランを選んだりすることが可能になりました。

つまり、電気は「決められたものを使う」時代から、「自分に合ったものを選ぶ」時代へと変わってきているのです。

新電力会社の業種一覧をまとめてみました!

業種カテゴリ特徴・例
電力・ガス会社系もともと地域の電力会社やガス会社が展開している小売部門。
例:東京電力エナジーパートナー、大阪ガス、東邦ガスなど
再生可能エネルギー系太陽光、風力、水力などの再エネを中心に供給。
例:自然電力、みんな電力、Looop(ループ)など
商社・総合エネルギー系石油・ガスなどのエネルギー関連事業から参入。
例:ENEOS、伊藤忠エネクス、丸紅新電力など
通信・IT系通信インフラを活用して電力事業に参入。
例:ソフトバンクでんき、auでんき(KDDI)、楽天でんきなど
住宅・不動産系スマートハウスや集合住宅との連携が多い。
例:ミサワホーム電力、パナソニックホームズ電気など
小売・流通系ポイントサービスや既存顧客との連携。
例:イオンでんき、ローソンでんき、コープでんきなど
地方自治体系地域振興やエネルギー地産地消を目的とする。
例:おおいた電力、浜松新電力、横浜みらい電力など
農業・漁業・地域団体系地域の再エネ活用や農地のソーラーシェアリング。
例:おひさま進歩エネルギー、いわて未来エネルギーなど
独立系ベンチャー自社発電所やPPA(電力購入契約)モデルなどを活用。
例:ENECHANGE、ハチドリ電力など
企業のグループ企業(異業種参入)家電メーカーや金融系などが参入。
例:オリックスでんき、ダイキンでんきなど

電力自由化によって、私たちは東京電力や関西電力といった地域の電力会社だけでなく、さまざまな企業の中から自由に電力会社を選べるようになりました。

たとえば、大阪ガスやENEOSといったエネルギー会社はもちろん、楽天でんきやauでんきなどの通信系、イオンでんきやローソンでんきといった身近なお店も電気を販売しています。

それぞれの会社がセット割やポイント還元など、ユニークなサービスを提供しているので、「電気はどこで買っても同じ」という時代はもう終わり。自分の暮らしにぴったりの電気を選べる時代がやってきたのです。

電力自由化の目的は?

電力自由化の目的は、大きく分けて3つあります。「電力の安定供給」「電気料金の抑制」「消費者の選択肢の増加」です。

①「電力の安定供給」
かつては地域ごとの大手電力会社が独占的に供給を担っていましたが、災害時などには一社だけでは対応が難しい場合もありました。自由化により複数の事業者が参入することで、供給体制が多様化し、リスク分散が図れるようになります。

②「電気料金の抑制」
競争がない状態では価格が固定されがちですが、複数の企業が電力市場に参入することで競争が生まれ、価格やサービスの見直しが進み、結果として電気料金が下がる可能性があります。

③「消費者の選択肢の増加」
従来は電力会社を選ぶことができませんでしたが、現在では料金プランやポイント付与、再生可能エネルギーの利用など、さまざまな特色を持つ電力会社から、自分のニーズに合ったサービスを自由に選べるようになりました。

このように、電力自由化は私たちの暮らしにとって「より便利で、より安心、より経済的」な環境を目指すための大きなステップなのです。

電力自由化のメリット

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電力自由化によって、私たちの暮らしにはさまざまなメリットが生まれました。
従来は決まった電力会社としか契約できませんでしたが、今では多くの企業が電力事業に参入し、料金やサービスの選択肢が広がっています。

この章では、電力自由化によって具体的にどのようなメリットがあるのかを、わかりやすく紹介していきます。
「電気代を安くしたい」「再生可能エネルギーを使いたい」「自分のライフスタイルに合ったプランを選びたい」など、あなたにとっての“得する選択”を見つけるヒントになるはずです。

電気料金の節約が期待できる

電力自由化の最大の魅力は、やはり電気料金を節約できる可能性がある点です。

電力自由化により、多くの電力会社が市場に参入しました。料金プランやサービスの価格競争が増えることによって、結果として電気料金の低下が期待できます。

また、ポイント還元やキャッシュバック、他サービスとのセット割引などを活用すれば、実質的な料金はさらに下がる可能性があります。特にファミリー層や電気使用量が多い家庭では、節約効果が大きく感じられるでしょう。

自分に合ったプランを選べる

電力自由化により、多様な料金プランから自分に最適なものを選ぶことが可能になりました。生活スタイルや電気使用量に応じて、基本料金の有無や従量料金型、定額型など様々なプランが提供されています。

各プランにはそれぞれ特徴やメリット・デメリットが存在します。従量料金型プランは使用量に応じて料金が変動するため、節電を意識することで電気代の節約が期待できます。一方、定額型プランは月々の支払いが一定で予算管理がしやすい反面、使用量が多い月には割高になる可能性があります。また、再生可能エネルギーを選択できるプランは環境への配慮を重視する方におすすめですが、通常よりも料金が高めに設定されていることが多いです。

プラン選びの際には、料金だけでなくサポート体制やカスタマーサービスの質も重要なポイントとなります。信頼できるサポートを提供している電力会社を選ぶことで、万が一のトラブル時にも安心して対応してもらえます。また、契約期間や解約条件を確認し、柔軟にプランを変更できるかどうかもチェックしましょう。これらのポイントを総合的に考慮することで、自分に最適な料金プランを見つけることができます。

再生可能エネルギーを選べる仕組み

環境意識が高まる中、電力会社を選ぶ際に「再生可能エネルギーの比率」を重視する人も増えています。電力自由化によって、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などのクリーンエネルギーを積極的に採用している電力会社のプランを選ぶことが可能になりました

CO2排出を抑えた地球にやさしいライフスタイルを実現したい方にとって、電力会社の選択は重要なアクションのひとつです。環境保全に貢献できるだけでなく、企業によっては電力使用のCO2削減証明書を発行してくれる場合もあります。

一部の新電力会社では、電気の供給源を100%再生可能エネルギーにしているところもあり、脱炭素社会の実現に貢献したいと考える個人や企業にとって魅力的な選択肢となっています。

まとめ:電力自由化のメリット

  • 電気料金の節約が期待できる
    競争によって料金が下がり、ポイント還元やセット割なども活用可能に。
  • ライフスタイルに合ったプランを選べる
    使用量や生活パターンに応じた多様な料金プランから、自分にぴったりのものを選べる。
  • 再生可能エネルギーを選択できる
    環境に配慮したクリーンな電力を選べるようになり、地球にやさしい暮らしが実現できる。

電力自由化のデメリット・注意点

電力自由化には多くのメリットがありますが、一方で注意しておきたいデメリットやリスクも存在します。
自由に電力会社を選べる反面、情報が多すぎて迷ってしまったり、選んだプランによっては思ったほど電気代が安くならなかったりすることもあります。

また、契約内容をしっかり確認しないと、解約時に違約金が発生するケースや、万が一の停電時に対応が不安な場合もあるため、事前のチェックが重要です。

この章では、電力自由化の裏側にある注意点やデメリットについて詳しく解説し、失敗しない電力会社選びのためのポイントをお伝えします。

料金が必ず安くなるとは限らない

料金プランによっては、使用量が少ない場合にかえって割高になるケースや、基本料金が高めに設定されているケースもあります。

そのため、電力会社の切り替えや料金プランの変更を検討する際は、多くの電力会社が提供している「料金シミュレーション」を活用するのがおすすめです
現在の電気の使用量を入力するだけで、今より本当に安くなるのかを簡単に確認できるため、無理なく自分に合ったプランを見つけやすくなります。

供給の安定性に対する不安

電力の供給自体は、送電網を管理する地域の送配電事業者が引き続き担当するため、
新電力会社を選んだからといって停電が増えるということは基本的にありません

しかしながら、一部の新電力会社では急な市場価格の高騰や経営難などにより、契約を一方的に終了する事例も発生しています。こうしたケースでは、自動的に地域の大手電力会社に切り替えられる仕組みはありますが、突然の対応を迫られる可能性もあるため注意が必要です。

解約や変更時の注意点

電力会社の乗り換えは基本的に無料で行えますが、契約期間中の解約には違約金が発生する場合があります。

特にキャンペーンや割引適用中のプランでは、一定期間の継続が条件になっていることが多く、その途中で解約すると割引が無効になったり、手数料がかかることがあります。

また、ポイント還元や付帯サービス(例:ガスや通信とのセット割)が解約と同時に終了することもあるため、
解約時には総合的に損得を見極めて判断することが大切です。

電力会社の選び方と比較のコツ

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電力自由化により選べる会社やプランが増えたことで、「どの電力会社を選べばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実際に、料金だけでなく、ポイント還元やセット割、再生可能エネルギーの使用状況など、比較すべきポイントはさまざまです。

この章では、自分に合った電力会社を選ぶためのチェックポイントや比較のコツをわかりやすく解説します。
毎月の電気代を抑えるだけでなく、安心して長く使えるサービスを見つけるために、ぜひ参考にしてください。

自分の使用状況を把握する

電力会社を選ぶ際には、まず自分自身の電力使用状況をしっかり把握することが重要です。毎月の電気使用量や使用時間帯、季節ごとの使用傾向などを確認することで、自分に合った料金プランを選ぶ手助けになります。

たとえば、家にいる時間が長く日中に電気を多く使う家庭と、夜間中心に使用する家庭では、選ぶべきプランが異なります。また、電化製品の種類や数、オール電化住宅かどうかなども考慮すべきポイントです。

電力会社の多くは、使用量に応じたシミュレーションサービスを提供しているため、それを活用して具体的な比較を行うことも有効です。

料金以外のサービスにも注目

電気代の安さだけで電力会社を選ぶのは得策とはいえません。多くの新電力会社では、料金以外にもさまざまな付加価値を提供しています。たとえば、電気使用量の見える化アプリや、節電アドバイスの提供、スマートホーム対応機器との連携など、利便性を高めるサービスがあります。

また、電気とガス、インターネット、携帯電話などのセット割引や、ポイントサービスとの連携(例:楽天ポイント、Tポイントなど)を提供している会社もあります。

こうした特典やサポート体制も選ぶ際の大きな判断材料になります。

信頼性や企業の安定性も確認

料金やサービス内容に加えて、企業の信頼性や経営の安定性も確認しておくことが大切です。過去に供給停止や契約打ち切りの実績がある会社よりも、長期的に安定したサービス提供が見込まれる企業を選ぶことが安心につながります。

企業の規模や実績、口コミ、サポート体制などを事前に調べておくとよいでしょう。また、経済産業省の「電力・ガス取引監視等委員会」や比較サイトなどを活用することで、客観的な評価情報も得られます。

まとめ:電力会社の選び方と比較のコツ

  • 自分の電気使用状況を把握する
    月々の使用量や時間帯、家族構成、住宅の設備などをチェックし、ライフスタイルに合ったプランを見極めましょう。
  • 料金以外のサービスや特典も確認する
    セット割引やポイント付与、スマート家電対応など、料金以外のメリットにも注目して比較しましょう。
  • 企業の信頼性や安定性をチェックする
    経営状況や口コミ、供給実績などを確認し、長く安心して使える電力会社を選ぶことが大切です。

乗り換えの手続きは簡単!実際の流れ

「電力会社の乗り換えって、なんだか面倒くさそう…」と思っていませんか?
実は、電力会社の切り替えはとてもシンプルで、スマホやパソコンから簡単に手続きできる場合がほとんどです。工事の必要もなく、現在の電力会社への解約連絡も不要なことが多いため、思っているよりずっと手軽に始められます。

この章では、乗り換えの具体的な手続きの流れをステップごとにわかりやすく紹介します。はじめての方でも安心して進められるように、注意点や準備しておくべき情報もあわせて解説していきます。

検針票・使用量を準備する

電力会社を乗り換える際に最初に必要になるのが、「検針票」「電気使用量のお知らせ」といった現在契約している電力会社から届く情報です。これには「お客様番号」「供給地点特定番号」「契約容量(アンペア数)」など、乗り換え先の会社に提出するための重要な情報が記載されています。

これらの情報をもとに、使用量に適した料金プランのシミュレーションを行うことができ、乗り換え先の電力会社もスムーズに切り替え手続きを進められます。最近では、検針票が紙ではなくWeb上のマイページで確認できることも多いので、事前にログイン情報なども確認しておきましょう。

Webからの申し込みが基本

電力会社の乗り換え手続きは、ほとんどの場合インターネットから簡単に申し込むことができます。乗り換え先の電力会社の公式サイトや、電力比較サイトから申し込みフォームにアクセスし、必要な情報を入力するだけで完了します。

入力項目は主に、現在の契約情報(お客様番号、供給地点番号など)、電気の使用者情報(名前、住所、電話番号など)、そして支払い方法(クレジットカードや口座振替)などです。申し込み完了後は、数日〜2週間ほどで新しい契約が開始され、特別な手続きや対応を必要とせずに自動で切り替わります。

また、一部の企業では電話や郵送でも申し込み可能ですが、Web申し込みは最も手軽かつスピーディーな方法として広く利用されています。

工事や停電は原則不要

電力会社の乗り換えと聞くと、工事や停電が必要なのではと不安になる方もいるかもしれませんが、実際にはそのような心配はほとんどありません。乗り換えによって電気の供給ルートが変わるわけではなく、今まで通り地域の送配電網を通じて電気が供給されるからです。

そのため、電柱やメーターの工事、電線の切り替えなどは不要で、住んでいる方が何か特別な準備をする必要もありません。もちろん、電気の供給が止まることも基本的にはありません。

ただし、ごくまれにスマートメーターが設置されていない場合は、電力会社側で無償設置の作業が入ることがありますが、その場合でも停電を伴わず短時間で完了します。乗り換えによる生活への影響はほぼないと言えるでしょう。

よくある質問(Q&A)

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ここでは、電力自由化に関するよくある質問にお答えします。電気会社の選び方や料金プランの比較、乗り換え手続きの方法など、多くの方が抱える疑問や不安を解消するための情報を提供しています。特に、電気代の節約や環境に配慮した選択を考えている方に役立つ内容となっていますので、ぜひご覧ください。

停電の心配はないの?

電力会社を乗り換えても、電気の供給は地域の送配電事業者(例:東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など)が引き続き担当するため、停電のリスクが高まることはありません。送配電網はこれまでと同じものを使用するため、品質や安定性に差が出ることも基本的にはありません。

実際の停電は、台風や落雷、設備故障といった物理的な要因が原因で発生するものであり、契約する電力会社の違いによって起こるものではありません。万が一停電が発生した場合も、地域の送配電会社が対応する仕組みになっているため、安心して乗り換えを行うことができます。

解約金や違約金はある?

多くの新電力会社では、契約期間の縛りがなく、解約金や違約金が発生しないプランを提供しています。

ただし、一部の会社やキャンペーンプランでは最低契約期間が設定されており、その期間内に解約すると手数料が発生するケースがあります。

契約前には必ず「約款(やっかん)」や「重要事項説明書」を確認し、解約条件についてしっかり把握しておくことが重要です。また、乗り換えによって現在の電力会社との契約が終了する場合でも、違約金が発生しないかどうかを確認しておきましょう。

なお、引っ越しに伴う解約については、ほとんどの電力会社が無料で対応しており、違約金なしで解約できる場合がほとんどです。

賃貸でも乗り換えできる?

はい、賃貸物件に住んでいる方でも、電力会社の乗り換えは可能です契約名義が自身であれば、管理会社や大家さんの許可なく変更できるのが一般的です。戸建てはもちろん、アパートやマンションでも個別契約されている場合は問題なく乗り換えが可能です。

ただし、建物全体で一括契約されている「高圧一括受電方式」の賃貸物件の場合は、個別に電力会社を変更できないことがあります。そのため、自分の住んでいる物件がどの契約形態なのか、あらかじめ確認しておくと安心です。

不明な場合は、管理会社や大家さんに問い合わせてみましょうまた、乗り換え後も設備や工事が不要で、停電のリスクもないため、賃貸でも手軽に電力会社を選べる時代になっています。

まとめ

電力自由化によって、私たちは自分のライフスタイルに合った電力会社を自由に選べる時代になりました。料金の節約だけでなく、環境への配慮や利便性の向上など、多様な価値を電力選びに反映させることができます。

ただし、選択肢が増えたからこそ、情報をしっかりと収集し、比較検討することが重要です。料金プランの内容や企業の信頼性、サービスの質などを総合的に見極めることで、自分にとって最適な電力会社を見つけることができるでしょう。

今後も再生可能エネルギーの普及や新たなサービスの登場により、電力市場はさらに進化していくことが予想されます。時代の流れを意識しながら、自分の暮らしに最も合った電力選びをしていきましょう。

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執筆者

小売電気アドバイザー

大山 泰正

小売電気アドバイザーの資格を持ち、電気の比較・情報サイト「エネべる」を運営しています。運営会社である株式会社enebellの代表取締役として、電力業界の最新情報や節約術に関する豊富な知識を提供。電力自由化や最適な電力プラン選びに関するアドバイスを分かりやすく解説しています。