新電力とは?大手電力会社との違いは?仕組みやリスクをわかりやすく解説!

アイキャッチ 新着記事
トップ画像

電気の販売が自由化されて以降、急増している「新電力」と呼ばれる電力会社。
でも、「これまでとなにがどう違うの?」と疑問に思った事はありませんか?

この記事では電力自由化以降に登場した「新電力」の仕組みやメリット、「そもそも一体何者なのか?」をわかりやすく解説します!

新電力が誕生の背景や、新電力ならではの魅力を知ることで、今使っているお家の電力会社を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

新電力とは?

イメージ図

新電力について

新電力とは「新規で参入した小売電気事業者」のことを指します。

これまでは東京電力や関西電力などの旧一般電力事業者(いわゆる大手電力会社)が、地域ごとに独占的に電力を供給していました。しかし、電力安定供給、電気料金の抑制、消費者の選択肢拡大を目的として、電力の小売が全面的に自由化されたことで、大手電力会社以外の企業も電力を販売できるようになりました。

この自由化以降に参入してきた新規電力会社のことを一般に「新電力」と呼びます。

新電力では、これまでにない割引プランやキャンペーンなど、独自のサービスを提供している企業が多く、自分のライフスタイルに合った電力会社の選択時の幅が大きく広がりました。

電力の小売自由化(電力自由化)について

ではここで、新電力が誕生するきっかけとなった電力自由化について見ていきましょう。

これまでは電力の販売のすべてを大手電力会社が地域ごとに独占していました
しかし、電力供給の安定化や市場競争による電気料金高騰の抑制、さらには自社サービスとの組み合わせなどのサービスの多様化を目的に、経済産業省の資源エネルギー庁によって2000年3月から段階的に自由化が推し進められてきました。

最初は大規模恒常やデパート、オフィスビルなどの「特別高圧」区分の電力会社を自由に選択できるところから自由化がスタートしました。その後、2004年4月・2005年4月に中小ビルや中小規模工場の「高圧」区分、そして2016年4月に一般家庭向けの「低圧」区分も自由化となり、電力の販売は全面的に自由化されていきました

  • 2000年3月:「特別高圧区分」で電力小売自由化スタート
  • 2004年4月、2005年4月:「高圧区分」に自由化領域を拡大
  • 2016年4月:一般家庭を含む「低圧区分」も対象となり電力小売の全面自由化

自由化による市場競争原理の導入と独自のサービス展開により、利用者も自分のライフスタイルや価値観に合った電力会社を選択できるようになりました。

まとめ

  • 電力自由化で、大手電力会社以外も電力を販売できるようになった
  • 電力自由化以降に参入した新規の電力会社新電力と呼ぶ

新電力の仕組みと特徴

イメージ図

電力供給の流れ

電力が各家庭に提供されるまでには「電気を調達」→「電気の送電」の手順を踏んでいます。

電気の調達方法は日本卸電力取引所(JEPX)と呼ばれる日本唯一の卸電力取引所で電力を購入する方法と自社の発電所で直接電力を発電する2種類の方法があります

電気の調達手段

  • JEPX(日本卸電力取引所)で電気を購入
  • 自社の発電所で直接電気を発電

JEPXは電力の売買を行う市場で、電力を売りたい事業者と買いたい事業者が取引を行う場所のことを指します。
新電力は自社で発電所を持つことが困難なことがほとんどのため、電力の調達をこのJEPXでの調達にすべて頼っていることがほとんどです

対して大手電力会社は自社の発電所で発電した電力をメインに、一部をJEPXでの購入で補うという方法で電力を調達しています。

そして、調達した電力を変電所や送電線、電柱などで構成された送配電網を利用して各家庭に送電しています。
送電する際に送配電網を持たない新電力は託送料金という形で利用料金を大手電力会社に支払うことで送配電網を利用して電力を各家庭に届けています

電気の品質に差はあるの?

「新電力の電気は品質が悪いのでは?」「停電が多くなるのでは?」といった品質面の不安の声も聞かれますが、結論としては新電力と大手電力会社で品質に差はありません

もともと、新電力が提供している電気の多くは大手電力会社が発電している電気を購入しており、お家に届くまでの送電設備も大手電力会社の送配電網を借りています
つまり、発電~送電までのインフラは大手と同一であるため、品質に差が出ることは決してありません。

新電力だからといって低品質な電気を使用して、家電製品が壊れやすくなるといった心配はないので安心して利用しましょう!

新料金プラン「市場連動型」

新電力が登場して以降、各社が特徴的な割引やサービスを展開する中、新しく登場してきた料金形態として「市場連動型」が挙げられます。

これまでは「従量電灯」というプランが主流で、使用量に応じて電気料金単価が段階的に上がっていき、この単価に使用量を掛けた金額と固定費を足すことで電気料金が計算されています。

  • 電気料金 = 基本料金 + 再エネ賦課金 + (燃料費調整額 + 電気料金単価) × 使用電力量

一方で市場連動型ではこの電気料金単価がJEPX市場の市場価格に連動して30分毎に変動します

市場連動型プラン

図1:市場連動型プランの価格推移イメージ

そのため、単価が安い時間帯に使用量を集中させるといった工夫により、従来よりも安く電気を使える可能性があります。ただし、電力市場価格が高騰した際には単価も連動して高騰するため、単価変動には気を配ってあげる必要があります。

まとめ

  • 日本卸電力取引所(JEPX)で調達した電力を主に供給している
  • 大手電力会社の送配電網を利用させてもらっている
  • 電気の品質に差はない
  • 市場連動型など、新たな電気料金プランも登場
関連記事

新電力のメリット

イメージ図

電気料金が安くなる可能性がある

何と言っても一番魅力的なポイントが安くなる可能性があるということです
電力自由化により、多くの電力会社は市場競争に勝つため、従来よりも安価で魅力的なプランを展開しています。
自分にライフスタイル適したプランに切り替えることで、電気代の節約が期待できます。

安価な料金を実現できる背景には、大手電力会社のような発電所や送配電網といった大規模施設を保有していないためと言われています。そのコスト削減分をキャッシュバックや値引きという形で還元することで安価な料金形態を実現していると言われています。

また、電気以外のガス・通信・保険など、別業界のサービスを展開している企業も多くあり、併せて契約するセット割が適用できるなど、別業界にも精通する企業が参入したことも要因の一つと言われています。

なお、料金のシミュレーションをホームページ上で提供している企業も多いため、乗換え前に一度試してみるのもおすすめです。

安さの秘訣

  • 大規模な施設を持っていないから管理費が安くなる
  • セット割など、自社の別サービスとの掛け合わせでよりお得に

ライフスタイルに合うプランを探せる

新電力各社は、多様なライフスタイルに対応した豊富な料金プランを準備しています。

  • オール電化住宅向けの夜間料金が安いプラン
  • EV車利用世帯向けプラン
  • ペットを飼っている人向けの「ペット割」など

このように、単に安いだけでなく、「ペット」や「EV車」など特定のライフスタイルに合わせた割引プランを選べるのが新電力の大きな魅力です。

1社ではなく複数の会社の中から自分のライフスタイルに最適な電力会社・プランを選ぶことで、電気料金を節約できるかもしれません。

環境に配慮した再生可能エネルギーを選べる

新電力の中には、地球温暖化などの環境問題に配慮した太陽光、風力、地熱発電を中心とした再生可能エネルギー(再エネ)を活用した電力プランを提供する電力会社もあります。

従来は発電方法を選ぶことはできませんでしたが、再エネプランを選択することで地球温暖化の原因となるCO2の排出を抑えた電力利用が可能となりました。

環境問題への関心が高い方は発電方法にこだわった「どんな電気を使うか」を自分の意志で選択できるようになりました。

新電力のメリットまとめ

  • 電気代が安くなる可能性が
  • 豊富なプランから自分にピッタリの料金プランを選べる
  • 環境に優しい再生可能エネルギーにこだわれる

新電力のデメリットとリスク

新電力との違い?

倒産・撤退のリスク

新電力を選ぶ際には、早期の倒産や市場からの撤退のリスクがあるという点を理解しておく必要があります

これはどの業界でも共通するリスクですが、新規参入してきた企業は昔から事業を展開している大手電力会社に比べて、会社としての体力やノウハウが不足している企業も多く、経営が安定せず事業継続が困難になるケースも見受けられます。

実際、資源エネルギー庁が公開している「電力小売全面自由化の進捗状況について」内では、2024年9月末時点で小売電気事業者の登録数734件に対し、2016年4月の電力自由化以降(2016年4月~2024年9月末)累計で事業廃止・解散・取消件数は123件にのぼります。

とはいえ、独自のサービスを展開しながら堅実に契約数を伸ばしながらいる企業も多く存在するため、会社の実績やグループ会社の情報を調べた上で電力会社を選ぶことが重要です

なお、万が一契約中の電力会社が倒産してしまった場合でも、地域の大手電力会社が電気を賄ってくれるため、突然停電となる心配はありません。

出典:資源エネルギー庁|電力小売全面自由化の進捗状況について(2024年10月29日)

解約金が発生するケースがある

新電力の中には途中解約により、解約金が発生する場合があり注意が必要です。

解約金は電力会社や契約プランによって金額や条件などが異なります。たとえば、

  • ◯◯ヶ月以内の解約
  • 更新月以外の解約

といった内容がよく見られます。
利用規約や公式サイトのFAQを確認するなど、契約前の下調べが重要です。

気軽に電力会社を切り替えられる時代になったからこそ、解約ハードルが低いことは重要なので無駄な出費を避けるためにも下調べをしっかり行いましょう。

「解約金0円」をうたっている電力会社なども多く、電力会社を選ぶ際の条件として解約金の有無を入れておくと良いかもしれません。

デメリットまとめ

  • いきなりの倒産や早期撤退のリスクがあるので実績や口コミで情報収集を
  • 解約金が設定されている電力会社も利用規約などの事前確認を怠らない

新電力の注意点と失敗しない選び方

イメージ図

供給しているエリアを確認する

まず確認すべきポイントは電力会社の電気供給エリアです

全国展開している会社は多くありますが、供給しているエリアが絞られている電力会社も少なからずあります
どんなに自分に合ったプランでも、自分が住んでいる地域に電気を供給していなければ意味がありません。

色々調べたあとで「供給していないから契約できない・・・」となってしまわないように、まず電力の供給エリアを確認しておきましょう。

自分のライフスタイルに合ったプランを選ぶ

新電力を選ぶうえで最も重要なのは、自分のライフスタイルに合ったプランを選ぶことです
例えば、共働きで日中は家にいない家庭であれば、夜間の電力量単価が安い「時間帯別プラン」などが向いています。

まずは「共働きで日中家にいない」「オール電化住宅に住んでいる」「4人世帯で住んでいる」など、自分がどんなライフスタイルで生活しているかを整理し、それの上で条件にあった電力会社や料金プランを探していくことが大切です。

最近では、特徴的なプランを打ち出している電力会社も増えており、自分にピッタリハマるプランを見つけて電気料金を節約していきましょう。ライフスタイルに合った賢い選択が、家計にも環境にも優しい選択となります。

料金シミュレーションを活用する

電力会社を選ぶ際は、各社が提供している料金シミュレーション」を活用すると、あらかじめどれくらいの電気料金になるのかを把握できます

多くの料金シミュレーションでは、居住地域と世帯数を入力するだけで、どれだけ電気料金が安くなるかを簡単に試算できます。あらかじめ、過去の検針票の「使用料(kWh)」や「契約アンペア数」を確認しておくことで、より具体的に料金の比較が可能となります。

中には複数社のプランを一括で比較できるサービスもあるので、料金シミュレーションとあわせて比較サイトを活用し、「具体的にどのくらい安くなるのか」を確認しながら、納得のいく選択をしましょう。

口コミやSNSを見てみる

電力会社を選ぶ際には、公式サイトの情報だけでなく、実際の利用者の声をチェックすることも大切です。

口コミサイトやSNSでは、「手続きのしやすさ」「契約後のサポート」「マイページの使い勝手」「解約の手続きのしやすさ」など、リアルな体験談が多数投稿されています。特に「サポートがつながりにくい」「急に料金が上がった」といったネガティブな情報は、公式サイトではなかなか得られない重要な判断材料になります

また、SNSでは最新のキャンペーン情報やトラブル事例などがリアルタイムで共有されていることもあり、タイムリーな情報収集に役立ちます。

ただし、中には誤った情報も含まれるため、複数の情報源を参考にしながら正しい情報を精査しつつ、信頼できる電力会社かどうかを見極めましょう。

選ぶときのポイントまとめ

  • 自分の住んでいるエリアに電気を供給しているか確認する
  • ライフスタイルに合ったプランを探してみる
  • 料金シミュレーションの活用で具体的な試算をしてみる
  • 口コミやSNSでネガティブな意見も含めて情報を集める

よくある質問(FAQ)

Q.電気の品質が悪くなりますか?

A.いいえ。

電気の供給に使われる送配電の設備は、大手電力会社のものを利用しています。

そのため、大手電力会社でも新電力でも同じ品質で電気が利用できます。


Q.新電力が倒産すると停電しますか?

A.停電することはありません。

倒産した場合、居住地域の大手電力会社が電力を供給するため、電気が使えない期間は発生しません。


Q.賃貸住宅でも新電力に切り替えることはできますか?

A.利用する本人が直接契約を結んでいる場合は切り替えることができます。

検針票に記載されている契約者名義が自身の名前であれば切り替えが可能です。

例外的に、賃貸住宅の大家が契約を結んでいる場合などは切り替えができません。


Q.切り替えには工事や費用は発生しますか?

A.工事も費用も発生しません。

これまでは、スマートメーター未設置世帯は設置工事(無償)が発生することがありましたが、沖縄を除くすべての地域で取り付けが完了しています。
出典:資源エネルギー庁|スマートメーターのオプトアウトについて(2025年2月28日)


まとめ|新たに登場した「電力会社」

新電力は、電気自由化以降に登場した多彩な料金プランやサービスを持った新しい電力会社です。

これまでにない取り組みや特徴的なプランなど、ライフスタイルが多様化した現代社会において、選択肢の幅が広がることは利用者としてはとても魅力的なポイントです。

電気代の高騰による家計の圧迫を少しでも軽減するため、新電力について調べてみるのはいかがでしょうか?
自分にピッタリの電力会社で賢く節約を目指しましょう!

執筆者アイコン
執筆者アイコン

執筆者

小売電気アドバイザー

大山 泰正

小売電気アドバイザーの資格を持ち、電気の比較・情報サイト「エネべる」を運営しています。運営会社である株式会社enebellの代表取締役として、電力業界の最新情報や節約術に関する豊富な知識を提供。電力自由化や最適な電力プラン選びに関するアドバイスを分かりやすく解説しています。