蓄電池とは何か?仕組みから活用方法まで徹底解説!

蓄電池とは?

「電気をためておけるって、なんだか便利そうだけど、実際どうなの?」そんな疑問を持つ方が増えています。

蓄電池があれば、電気代の節約はもちろん、太陽光と組み合わせた自家消費や、停電・災害時の備えにも役立ちます。でも、いざ導入しようとすると費用や選び方が気になりますよね。

この記事では、蓄電池の仕組みや活用方法から、メリット・注意点・最新の動向まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます!

蓄電池とは?

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蓄電池の基本的な役割と仕組み

蓄電池は、電気をためておき、必要なときに取り出して使うための装置です。
蓄電池内部では化学反応を利用して電気を蓄え、必要に応じて家庭の電力として出力できます。

現在家庭用で主流の「リチウムイオン電池」は、スマートフォンや電気自動車にも使われる高性能技術を応用したもので、高い安全性と大容量を両立しています。こうした技術進化により、家庭の電力を安定させるだけでなく、停電や災害時の非常用電源としても大いに活躍します。

たとえば、昼間に太陽光発電でつくった電気を蓄電池にためておけば、夜間や停電時にもその電気を使うことができます。これは、電力会社からの電気購入を減らせるだけでなく、自宅でつくった電気を無駄なく活用する方法でもあります

なぜ今、蓄電池が注目されているのか

ここ数年で、家庭用蓄電池への関心が一気に高まっています。その背景には、電気代の高騰自然災害への備え、そして太陽光発電との組み合わせによる自家消費の拡大といった、いくつかの大きな理由があります。

電力料金の上昇

まず注目されているのが、電力料金の上昇です。燃料価格の変動や為替の影響、再エネ賦課金の増加などによって、ここ数年で家庭の電気代は右肩上がりになっています。そんな中、昼間のうちに発電した電気をためておき、夜間に使うことで電力会社からの購入量を減らせる蓄電池は、家計の節約に直結するツールとして注目されています。

卒FITによる電力買取価格の下落と自家発電へのシフト

住宅用太陽光発電の「卒FIT問題」も蓄電池普及を後押しする要因です。固定価格買取制度(FIT)による売電価格が終了した後、安く売るよりも「ためて使う」方が経済的という考えが広まり、自家消費率を高めるための選択肢として蓄電池が再評価されています。

FIT期間中は1kWhあたり30円以上の売電価格だった家庭でも、卒FIT後は大手電力会社で1kWhあたり7~10円程度の水準に下落し、売電するよりも自宅で使った方が経済的だとする判断が広がりつつあります。

災害時の備えとしての蓄電池

日本は地震や台風など自然災害が多い国です。いざというときに停電しても最低限の電力を確保できる手段として、蓄電池は非常に心強い存在です。特に子どもや高齢者がいる家庭では、「安心のために導入したい」という声が増えています。

蓄電池が注目される理由

  • 電力料金の上昇を受けて、電気代節約の手段として「自家発電・自家消費」が注目されてきている
  • 卒FITにより、売電よりも自家消費を最大化したほうが経済的
  • 災害に対する備えとして、電力を確保しておきたい

太陽光発電パネルなしでも設置できるの?

蓄電池は太陽光発電パネルのない家庭でも、設置することはできます。
もちろん「非常用電源としての活用」や「電気代の安い時間帯に充電し、高い時間に蓄えた電力を使う」などの方法で活用することができます。

一方で、蓄電池を太陽光発電と組み合わせることでさらなる相乗効果が期待できるため、蓄電池を最大限活用するのであれば、太陽光発電パネル+蓄電池のセットを導入するほうがおすすめです

蓄電池の活用方法とその効果

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太陽光とピークシフトで自家消費を最大化

蓄電池を活用することで、太陽光発電でつくった電気を「できるだけ自宅で使い切る」ことが可能になります。
特に近年は売電価格が年々下がっているため、「電気を売るよりも、自分で使う(自家消費する)」ことが電気代を節約するカギになっています。

では、どのようにすれば蓄電池で節約効果を最大限に引き出せるのでしょうか?
以下に、すぐに実践できる具体的な工夫をご紹介します。

時間帯を意識したかしこい電力活用術(ピークシフト)

電気料金のプランによっては、時間帯ごとに単価が異なるケースがあります。
たとえば「夜間は安く、昼間は高い」といった料金体系が一般的です。

こうしたプランでは、夜間の安い時間帯に蓄電池を充電し、昼間にその電気を使うことで、単価の差を利用して電気代を節約できます。

また、洗濯機や食洗機などの家電を、太陽光発電の多い日中に使用するだけでも、自家消費が進み、電気代の節約につながります。

さらに、HEMS(エネルギーマネジメントシステム)と連携することで、蓄電池の充放電や家電の使用タイミングを自動で最適化することも可能です。

蓄電池を活用した節約術

  • 電気料金の安い夜に蓄電池を充電する
  • 昼間は太陽光発電+蓄電池で電気代の高い時間を自家消費でまかなう
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災害や停電時に役立つ家庭の備えに

災害による停電は、いつ起きてもおかしくありません。そんな時、蓄電池があれば、最低限の照明やスマホの充電など、暮らしを支える電力を確保できます。

たとえば、日中に太陽光発電で蓄えた電力を、停電中に使うことも可能。最近の蓄電池には「停電時の自動切替機能」や「重要機器への優先給電機能」など、非常時を想定した便利な機能も搭載されています。

電気代をどれくらい節約できるの?

蓄電池を導入すると、電気代はどの程度節約できるのでしょうか?

もちろん効果は、家庭の電力使用量や太陽光発電の発電状況によって異なりますが、ここでは具体的なシミュレーションをもとにイメージしてみましょう。

例えば4人世帯向けの一般的なサイズとされている「蓄電容量8kW」の蓄電池を導入し、毎日フル充電して夜間に使用すると仮定します。

8kW(充電容量) × 365日 × 30円(電気の平均単価) = 87,600円

1月あたり : 約7,300円

月々なんと約7,300円もの電気代を節約することができます!

なお、2021年度の環境省のデータによると、1kWの設置容量の発電量は年間の全国平均で1,303kWhです。これを1日あたりに換算すると約3.57kWhとなります。

したがって、1日あたり8kWhの充電量をまかなうには、最低でも3kW以上の太陽光パネルが必要になります。太陽光がしっかり発電してくれる環境であれば、より多くの自家消費が可能となり、節約効果もさらに高まります。

環境省|令和3年度 再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査委託業務報告書

経済産業省|太陽光発電について

失敗しない蓄電池の選び方

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蓄電池を導入する際には、「どんな目的で使いたいのか?」を明確にすることがとても重要です。非常用か、日常の節約目的か、あるいは太陽光との連携か――目的によって選ぶべき容量やタイプ、設置方法も変わってきます。ここでは、主なチェックポイントを紹介します。

蓄電容量(何kWhの電気をためたいか)を決める

蓄電池を選ぶ際にまず検討すべきなのが、「どれだけの電気をためたいのか」という蓄電容量です。蓄電容量とは、蓄電池が一度に蓄えられる電力量のことで、家庭で使用する家電をどれくらいの時間まかなえるか直結します。

たとえば、4人家族の平均的な1日の電力消費量は約10〜14kWh程度とされており、8〜10kWhの蓄電容量があれば夜間や停電時にもある程度の備えになります。逆に、昼間の太陽光で発電した分をできるだけ自家消費に回したいだけであれば、4〜6kWh程度の小容量でも十分なケースもあります。

家庭の使用状況や目的に応じて、「日常使い重視」か「非常用重視」かを明確にし、それに見合った容量を選ぶことがポイントです。

蓄電容量使用用途
4~6kWh消費電力の少ない家庭向け。停電時などの、最低限の非常電源として利用したい人。
8~10kWh3~4人世帯向けの一般的なサイズ。売電ではなく、自家消費を中心に節約をしたい人はこのあたりの容量がおすすめ。
10kWh~大容量サイズ。停電時でも最低限の生活を1~2日程度維持できる容量。

太陽光導入済みかどうかで選ぶ「充電方式」

充電方式には大きく分けると「単機能型」と「ハイブリッド型」の2種類があります。充電方式を検討する際にはまず「パワーコンディショナー(パワコン)」という装置について理解しておきましょう。

パワーコンディショナー(パワコン)とは?

パワコンとは、電気の変換を担う装置で、「太陽光発電 → 蓄電池」や「蓄電池 → 家庭用コンセント」などの、電力を出力する際に、電気を利用できる状態に変換する役割を持っています。

これを踏まえて充電方式を選びましょう。

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、1台のパワコンで太陽光発電と蓄電池の両方を制御できる方式です。電力の流れがシンプルで、効率よく電気を変換するためロスを最小限に、無駄なく電気を活用できるのが特徴です。

太陽光と蓄電池を同時に導入する場合や、新築住宅に取り入れる場合は、ハイブリッド型のほうがコストパフォーマンスに優れています。また、配線もシンプルになり、省スペースで設置後の見た目もスッキリします。

単機能型

太陽光発電のシステムを導入済みのご家庭で導入する場合におすすめなのが単機能型です。

太陽光発電を導入済みで、ハイブリッド型を導入する場合は、すでにある太陽光発電システムの変更が必要となるため、余計な費用がかかってしまいます。

ただし、ハイブリッド型に比べて、蓄電池用のパワコンと太陽光発電用のパワコンの2台を設置するなど、スペースが必要となります。

単機能型ハイブリッド型
コスト比較的安い高い
スペース場所を取る省スペース
電力変換効率低い高い

設置場所の確認

蓄電池を導入する際は、どこに設置できるかをしっかり確認することも重要です。
機種によってサイズや重量が異なり、設置には一定のスペースと環境条件が求められます。

屋外に設置する場合は、生活スペースを圧迫することなく設置が可能です。
しかし一方で、天気や気候の影響を受けてしまうため、高温多湿や直射日光、豪雪地域などの環境においては設置が推奨されないケースも発生します。

屋内に設置する場合は、天気や気候の心配はありませんが、駆動音が多少なりとも発生するため、生活空間に設置した場合、多少音が気になってしまう可能性もあります。

こういったことを加味しつつ、メーカーサイトでサイズ感を確認しながら導入する蓄電池を決めていきましょう。

導入前に知っておきたい注意点

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耐用年数はどのくらい?

蓄電池の耐用年数は、製品の種類や使用条件によって異なりますが、一般的に約15~20年と言われております。
なお、耐用年数を超えると、蓄電池がすぐに使えなくなるわけではなく、充電できる電力量が徐々に減少していきます。

この寿命は製品ごとに決まっている「サイクル数」という「充放電を何回繰り返せるか」によって決まります。
一般的に家庭でよく利用されるリチウムイオン蓄電システムの場合、サイクル数は約6,000~12,000回のものが一般的です。

サイクル数耐用年数目安
6,000サイクル約16.4年
12,000サイクル約32.8年

※充電→放電のサイクルを1日1回で利用した場合

初期費用はどのくらいかかる?

導入に当たっては、容量やメーカーにより金額感は大きく変わってきますが目安としては約200~600万円前後が蓄電池の費用としてかかってきます。

機種によっては、同じ容量でも100万円以上価格差が出ることがあります。これは、蓄電池の性能だけでなく、パワコンの種類や周辺機器、保証期間の違いなどによるものです。

また、ハイブリッド型などの高機能モデルは価格が上がる傾向にありますが、太陽光発電との連携効率が高く、節電効果や非常時の安心感を重視する方には人気があります。

国内の代表的なメーカーの蓄電容量と金額感をまとめてみました。

メーカー型番蓄電容量定価
京セラEGS-MC05505.5kWh342万円
EGS-MC110011.0kWh562万円
EGS-MC165016.5kWh782万円
シャープJH-WBPB80104.2kWh246万円
JH-WBPDB6506.5kWh344万円
JH-WBPB93408.4kWh415万円
JH-WBPDB77715.4kWh646万円
ニチコンESS-T3S14.9kWh120万円
ESS-T3M17.4kWh290万円
ESS-T3L19.9kWh360万円
ESS-T3X114.9kWh460万円
PanasonicLJB12353.5kWh225万円
LJB12565.6kWh286万円
LJB1235+LJB12569.1kWh432万円

※スマートモニターなどの蓄電池に必要な装置も含めたシステム全体の金額を参照

京セラ|マルチ入力型ハイブリッド蓄電システム

シャープ|クラウド蓄電池システム組み合わせ一覧

ニチコン|家庭用蓄電システム

Panasonic|太陽光発電・蓄電システム:[住宅用]創蓄連携システムS+

国や自治体の補助金を活用して少しでも安く導入を!

蓄電池の導入には高額な初期費用がかかりますが、国や自治体の補助金制度を活用すれば、現在、国や自治体ではさまざまな補助制度が用意されており、条件を満たせば数十万円〜最大60万円程度の補助を受けることが可能です。

2025年度(令和7年度)には、以下のような補助制度が実施されています。

名称金額上限
子育てグリーン住宅補助金64,000円/台
DR補助金(デマンドレスポンス支援)60万円/1申請
DER補助金(分散型エネルギーリソース)27,000円 or 32,000円/kWh60万円/台

まとめ|売電から自家発電の過渡期に蓄電池を活用しよう!

太陽光発電の売電価格が下がり続ける今、エネルギーの活用方法は「売る」から「自家消費する」方向へとシフトしています。

蓄電池を導入することで、太陽光で発電した電気を貯めて夜間に使う、電気代の高い時間帯を避けて電力を利用する、災害時にもライフラインを維持するといった、柔軟なエネルギー運用が可能になります。

導入には非常に高額なお金がかかりはしますが、補助金や最新のエネルギーマネジメント技術を活用することで、導入コストの負担を抑えつつ、効率的な運用ができます。エネルギーの自立性を高めたいと考える家庭にとって、今こそ蓄電池の導入を検討する好機です。

本記事のまとめ

  • 売電はダウントレンド、これからは自家発電率を上げて節約を!
  • 蓄電池を使った、ピークシフトで電気代を節約
  • 補助金制度の活用で初期費用を大幅に軽減
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執筆者

小売電気アドバイザー

大山 泰正

小売電気アドバイザーの資格を持ち、電気の比較・情報サイト「エネべる」を運営しています。運営会社である株式会社enebellの代表取締役として、電力業界の最新情報や節約術に関する豊富な知識を提供。電力自由化や最適な電力プラン選びに関するアドバイスを分かりやすく解説しています。